抜歯矯正をおすすめしない理由

美しい横顔

 矯正治療の説明を受けたものの、抜歯すべきかどうかで悩んでいませんか? 原則、抜歯(犬歯の隣の第一小臼歯)はおすすめできません。ここでは、おすすめできない理由を5つの悩みとその対策と共にお伝えします。ぜひ参考にしてください。

美しい横顔

1.口元が出ているのが悩みで、引っ込めたい場合

 口元が出ているのが悩みの方の多くは、歯がきれいに並んでも横顔の鼻とあごの先を結ぶライン(Eライン)よりも唇が引っ込んでいないと満足できないようです。従って、こういう場合は、抜歯することになりがちです。

 しかし、矯正や美容整形で、使われている横顔を評価する基準のEラインというものには、疑問を感じます。なぜなら、Eラインというのは欧米人の基準なのです。鼻が低く、あごが尖ってない日本人にこの基準を適用すると、ほとんどの人が、口元が出ているということになってしまいます。つまり、Eラインを基準にすれば、みな抜歯になるということです。

 決して美容整形をすすめているわけではありませんが、欧米人のような顔を目標にしている場合は、鼻を高くするなどの整形手術をしない限り、たとえ抜歯しても満足のいく結果は得られません。鼻が低いままで、抜歯すると老け顔になりがちです。

Eラインと横顔

 そこで、抜歯しないで、口元を引っ込めるには、ディスキングが有効です。ディスキングとは、歯の幅を少し小さくするために、エナメル質の部分を0.3mm程度削ることです。削ることに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、虫歯で削るわけではないので、痛みはありません。年齢を重ねると徐々に歯を失うことになるのが現実です。それなのに健全な歯を抜いてしまっていいのですか?もう一度、よく考えてみてください。

2.良く噛めないのが悩みで、矯正したい場合

  良いかみ合わせを作るためには、抜歯をしてはいけません。特に4番(第一小臼歯)は歯列の中心にあり、かみ合わせの要です。また、歯にはそれぞれの役目があり、1番から7番までの歯が並んでいます。どれ1本欠けても良いかみ合わせを作ることはできないのです。ましてや、「4番と5番は同じような形をしているから、抜いても大丈夫」なんてことはあり得ません。

3.滑舌が悪いのが悩みで、矯正したい場合

「滑舌が悪い」という言葉をときどき耳にすることがあると思います。これは「口の中で舌が上手く動かない」ということです。舌が口の中で自由に動くためには十分なスペースとだ液が必要です。出っ歯やオープンバイト(上下の歯がかみ合わずスペースが空いている状態)の人は、口が閉じにくく、口呼吸をしていることが多いため、口の中がいつも乾燥していて舌が自由に動けないのです。ですから、口が閉じられるように矯正することが必要です。

 こういう状況で抜歯してしまうことがとても多いのです。実は、私も30年前は抜歯していました。しかし、抜歯すると別のとても大きな問題が起こってしまいます。それは、抜歯によって歯のアーチが小さくなることです。そして、スペース不足で舌が自由に動けないという問題が起こります。そうなると滑舌が悪いという悩みは残りますし、場合によっては舌が窮屈で圧迫されているように感じ、苦しむことにもなりかねません。

4. あごの動きが悪いのが悩みで矯正する場合

 口が開けにくい、口の開閉時に音がするなどの症状がある場合、矯正の検査で必ず「あごの動きを調べる検査:Cadiax」(下の写真)を受けてください。あごの動きが悪くなる原因にはいろいろありまが、最も関係しているものは「噛み合わせ」です。矯正治療後にあごの関節の調子が悪くなったという人を調べると、抜歯した場合が多いのは、事実です。そこで、私の30年の経験から言えることは、4番(第一小臼歯)は強くかみ締めた時にストッパーの役目をする歯であり、あごの関節を守る歯として最も重要な歯です。したがって、あごの関節の不調がすでにある場合は絶対に抜歯してはいけません。

あごの動きを調べる検査(cadiax)

5. 「抜歯して矯正しましょう」と言われたが、抜きたくない場合

 正直なところ、誰しも健全な歯を抜きたくありません。日本の歯科医師総数は約10万人です。そのほとんどが8020運動(80歳で20本以上の歯を残そう)のもと、日々、頑張っています。虫歯がひどく神経をとることになっても、歯が半分になっても、どうにかその歯を残そうと治療しているのです。これは年齢を重ね、少しずつ歯を失って行き、高齢になるとどんなに不自由なことになるかを良く分かっているからです。1本でも多く歯を残すことが、とても重要なのです。

 しかし、矯正の分野の歯医者はその一方で、抜歯を続けているのです。もし、私が矯正治療を受ける場合は、絶対に抜歯されたくありません。もう一度、よく考えてみてください。抜いてまで矯正する必要がありますか? 矯正をあきらめた方が賢明かもしれません。それでも、どうしても矯正したい場合は、抜歯しないで矯正できる歯医者を見つけて、ご相談ください。

6.まとめ

 正直言って、矯正するための抜歯(犬歯の隣の第一小臼歯)はおすすめできません。抜歯せずに矯正するという方針で治療している歯医者もたくさんいますので、安易に抜歯しないでください。抜いてしまったら、二度と元へはもどせません。抜歯に疑問を感じている方、参考にしてください。

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