歯ぎしりについて考えたことってありますか? 実は、自覚がなくても、たいていの人が歯ぎしりをしています。そして、それは睡眠時ばかりでなく昼間も行われていることがわかっています。
ここでは、みんながしているのに、あまり知られていない歯ぎしりについて、紹介します。自分の歯ぎしりは良い歯ぎしりか?あるいは悪い歯ぎしりか?を知っていただきたいと思います。
1.3つのタイプの歯ぎしり
1-1.グラインディング
睡眠時に「ギーギー」「ギシギシ」「ゴリゴリ」と大きな音をたて、上下の歯をこすり合わせるタイプの歯ぎしりをグラインディングといいます。自覚がなくても大きな音ですから、家族などにたずねてみると、気づかれていることが多いです。
1-2.タッピング
グラインディングに比べ、小さな音で周りの人に迷惑をかけることもありません。「カチカチ」と上下の歯を合わせる歯ぎしりで、このタイプは少ないです。
1-3.クレンチング
昼間も睡眠時もみられる歯ぎしりです。音を出さずに静かに、強く噛みしめるタイプですので、自覚していないことが多いようですが、調べてみると、昼間、仕事、勉強、スポーツなどに集中している時、あるいは、何かを我慢している時などに無意識に食いしばるタイプです。
2.歯ぎしりは必要なもの
あまり知られていないことですが、歯ぎしりは子供から大人まで、ほとんどの人がしています。その最も大きい効果はストレス解消です。
現代社会において、人々は多くのストレスを抱えて生活しています。それは、大人に限ったことではありません。例えば、幼稚園や保育園に入園したての子供は、母親と離れとても心細い状況でしょう、そして、集団の中で様々なストレスを感じているはずです。そのストレス解消のために歯ぎしりをするわけです。大人であっても同じような状況です。多分、大なり小なりのストレスを経験していることと思います。
試しに、5-6歳の子供の口の中を観察してみてください。ほとんどの乳歯がすり減って、平らな歯になっているはずです。これは、異常なことではありません。ときどき、子供の歯ぎしりを心配して、相談に来られるお母さんがいますが、私は「歯ぎしりは大いにやってもらいましょう! 大丈夫ですよ! 」と答えます。間違っても歯ぎしり防止装置など使わせてはいけません。そんなことをしたら、子供はストレス解消できずに、他の問題が起こることもあります。それは、おねしょ、夜泣き、円形脱毛症、腹痛などさまざまです。
3.良い歯ぎしりとは
歯ぎしりは、決して悪者ではなく、現代社会に生きる我々にとって、必要なものであると、理解していただけたと思います。なかでも良い歯ぎしりとは、奥歯に強い力がかからない歯ぎしりです。少し難しいかもしれませんが、上下の歯を軽く噛み合わせて、あごを左右に少し動かした時にほんのわずかですが、上下の奥歯に隙間が空くような噛み合わせでの歯ぎしりのことです。
良い歯ぎしりかどうかを自分で判断するのは難しいですが、実は簡単に調べる方法があります。
まず、上の歯型に合わせて極薄いフィルム(ブラックスチェッカー)を作ります。そのフィルムを装着したまま一晩寝てもらい、睡眠時の歯ぎしりを記録します。強く噛んでいる部分はフィルムが削れるため、どの部分でどんな歯ぎしりが行われているのかがはっきりします。奥歯部分は削られた跡がなく、犬歯(糸切り歯)のみに歯ぎしりの跡があるのが良い歯ぎしりです。
4.悪い歯ぎしりとは
悪い歯ぎしりとは、一部の奥歯のみに強い力がかかっている歯ぎしりのことです。悪い歯ぎしりを長い間、続けていると、一部の歯が極端に削れたり、歯の周りの歯肉が下がって歯根が露出してしまったり、それがもっと悪化すると歯の周りの骨が吸収してしまい、歯がグラグラになってしまうこともあります。さらに悪化すると、顎関節症を引き起こしたり、時には肩こりや頭痛で苦しむこともあります。
ブラックスチェッカーで調べると、悪い歯ぎしりは犬歯にはすり減りの跡がなく、奥歯のみが著しく削れている状態です。
5.まとめ
歯ぎしりには、ストレス解消効果、自律神経の調整効果があることがわかっており、悪習慣ではありません。つまり、全身の健康維持のためには良い歯ぎしりをすることがとても大事です。そして、良い歯ぎしりができる噛み合わせである必要があります。
「良い歯ぎしりができているのかなぁ?」と心配な方は、ブラックスチェッカーでどんな歯ぎしりをしているかを調べてみてください。そして、悪い歯ぎしりであった場合は、噛み合わせを治す必要がありますので、歯科で相談してみて下さい。
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