きれいな歯並びにするために、抜歯がしばしば行われています。抜歯しないと治療できない場合があるのは事実です。しかし、抜歯したことを後悔して悩んでいませんか? ここでは、後悔しないために抜歯しない方がよい歯とその抜歯によって、引き起こされる8つの問題について紹介しますので、簡単に抜歯せずに、よく考えてみてください。
抜歯しない方がよい歯は、犬歯の後ろの歯(第一小臼歯)です。すでに抜歯してしまって、悩んでいる方にその歯は戻せませんが、対策はいろいろありますので、ひとりで悩まずに相談して下さい。
目次
1.第一小臼歯を抜いて矯正すると起こる8つの問題
1-1.口腔容積を小さくしてしまう
上下のすべての歯が揃っていれば、28本の歯があります。その中から4本(第一小臼歯)を抜いてしまうと上下それぞれで、約1.4cmアーチが小さくなってしまいます。その小さくなった上下のアーチで作られるスペースも小さくなるわけです。
1-2.睡眠時無呼吸症候群になりやすい
上と下の歯のアーチでできる空間に舌が位置しているわけですが、第一小臼歯を4本抜くと、そのアーチが小さくなってしまい、舌の居場所がなくなり、舌は咽頭の方に押し込まれることになります。それによって、気道が狭くなることから、睡眠時無呼吸症候群になりやすくなってしまうのです。
1-3.いびきをかきやすい
歯のアーチが小さくなり、舌の居場所がなくなると、舌は咽頭の方へ押し込まれることもありますが、口を閉じているのが苦しくなり、口を開けて口呼吸するようにもなります。これがいびきへとつながります。
1-4.良い噛み合わせが作れなくなる
第一小臼歯は歯列の中心にあり、噛み合わせの要です。下のあごの位置を決める大きな役割があるのです。従って、この歯を抜いてしまうと良い噛み合わせが作れなくなります。
1-5.顎関節症になるリスクが増える
あごの位置は第一小臼歯がストッパーとして働き、決定されます。しかし、その第一小臼歯を抜歯してしまうと、あごの関節を守ることができなくなり、顎関節症を引き起こすリスクが増えるのです。
1-6.前歯が直立しすぎたり、引っ込みすぎてしまう
上の前歯の角度は、見た目で決めるものではなく、あごの関節の傾斜と調和がとれていなければなりません。しかし、第一小臼歯を抜くと前歯が直立してしまいがちで、スムーズなあごの動きができなくなります。
1-7.老け顔になる
歯がガタガタだったり、出っ歯であったりすると、口元を引っ込めて美しい顔にしたいと思います。しかし、第一小臼歯を抜歯して矯正した場合、口元が引っ込み過ぎてしまうという、大きな問題がときどき起こります。10代、20代の若い方でも、口元が引っ込み過ぎると、不健康な元気のない顔になります。その顔の20年後、30年後、40年後を想像してみてください。前歯を失ったご老人のような顔になりやすいのです。鼻の下から口元にかけて縦のシワが目立ったり、ほうれい線がより深くなりやすくなります。
1-8.不定愁訴を訴える人が多い
第一小臼歯を4本抜歯して矯正した経験のある方の中には、30代から50代になって、体調が悪く、どこの病院へ行っても治らない。最終的に、うつ病と診断され悩んでいる方がときどき、相談に来られます。これは、第一小臼歯を4本抜歯したことによって、舌、口の周りの筋肉、顔面の筋肉のバランスが大きく崩れたことが原因と推測できます。なぜなら、第一小臼歯を4本抜歯していない矯正経験者には、不定愁訴を訴える方はまずいません。若いころには、自覚がなかった問題も、年齢を重ねるにつれ、徐々に現われるようになり、そこに顎関節症などの痛みが加わると、心の問題を起こしてしまうようです。
2.まとめ
「きれいな歯並びにしたい」と思い矯正を始める方が多いと思います。もちろん、見た目の美しさも大事ですが、それは健康であってこその美しさです。きれいに歯が並んでいても、舌、口の周りの筋肉、顔の筋肉、顎関節と調和のとれた歯並びでなければ、安定もしませんし、不定愁訴などの問題を引き起こします。
ここで紹介した問題がすべての方に起こるわけではありませんが、現に、これらの問題に苦しんでいる矯正経験者が、少なからず存在することを知っていただきたいと思います。決して簡単に第一小臼歯を抜いたりせず、ご自分の歯を大切にしていただきたいと思います。また、抜歯してしまって後悔している方は、一人で悩まないでください。いろいろな対策がありますので、相談してください。
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